実数

第6講 Dedekind切断

Dedekind切断 有理数体 $\mathbf{Q}$ の部分集合 $L$ がDedekind切断であるとは
  • $L\neq\emptyset,\ L\neq \mathbf{Q}$
  • $[\ p\in L\ \mathrm{and}\ q \le p\ ]\ \Rightarrow\ q \in L$
  • $\forall p\in L,\ \exists q\in L,\ p < q$
を満たすことをいう. すべてのDedekind切断からなる集合を $\mathcal{D}(\mathbf{Q})$ と書く. 以後,Dedekind切断のことを単に切断と呼ぶことにする.
切断の順序 切断の集合 $\mathcal{D}(\mathbf{Q})$ における順序を
$L_1 \le L_2\ \stackrel{\mathrm{def}}{\iff}\ L_1\subset L_2$
により定義する.$\mathcal{D}(\mathbf{Q})$ はこの順序により全順序集合となる 詳しく! このとき,次が成り立つ:
  • $\mathcal{D}(\mathbf{Q})$ は最大元と最小元をもたない
  • $\mathcal{D}(\mathbf{Q})$ は上限性質をもつ
有理切断 $q\in\mathbf{Q}$ に対して
$L(q)\stackrel{\mathrm{def}}{=}\{\,x\in\mathbf{Q}\,|\,x < q\,\}$
と定め,これを有理切断と呼ぶ すべての有理切断からなる集合を
$\mathcal{D}(\mathbf{Q})_0\stackrel{\mathrm{def}}{=}\{\,L(q)\,|\,q\in\mathbf{Q}\,\}$
と表すことにしよう. $\mathcal{D}(\mathbf{Q})_0$における演算を以下のように定義する: $p,q\in\mathbf{Q}$ に対して
和 $L(p)+L(q)\stackrel{\mathrm{def}}{=}L(p+q)$
差 $L(p)-L(q)\stackrel{\mathrm{def}}{=}L(p-q)$
積 $L(p)L(q)\stackrel{\mathrm{def}}{=}L(pq)$
$L(q)\neq 0$,すなわち $q\neq 0$ のとき
商 $L(p)/L(q)\stackrel{\mathrm{def}}{=}L(p/q)$
次が成り立つ:
  • $\mathcal{D}(\mathbf{Q})_0$ は $\mathbf{Q}$ と同型な順序体である
  • $\mathcal{D}(\mathbf{Q})_0$ は $\mathcal{D}(\mathbf{Q})$ の稠密な部分集合である
実数としての切断 以上により,切断の集合 $\mathcal{D}(\mathbf{Q})$ が前実数体であることが示された.従って前講の方法で演算を定義することににより $\mathcal{D}(\mathbf{Q})$ は実数体となる:
$\mathcal{D}(\mathbf{Q})=\mathbf{R}$
ここにおいて,我々は「実数とは何か」という問に対する一つの完全な回答を得たことになる.すなわち
実数とはDedekind切断のことである
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