集合と位相

第6講 距離空間

距離 集合 $X$ における距離(距離関数)$d$ とは,写像 $d:X^2\to \mathbf{R}$ であって次の条件を満たすものをいう:
$\mathrm{(i)}$ $d(x,x')\ge 0$
$\mathrm{(ii)}$ $d(x,x')= 0\iff x=x'$
$\mathrm{(iii)}$ $d(x,x')= d(x',x)$
$\mathrm{(iv)}$ $d(x,x'')\le d(x,x')+d(x',x'')$
条件 $\mathrm{(iv)}$はしばしば三角不等式と呼ばれる.
距離が定義された集合を距離空間といい,$(X,d)$ のように表す.
開集合と閉集合 $(X,d)$ を距離空間とする. $X$ の部分集合 $U$ が開集合であるとは,
$\forall a\in U,\ \exists\varepsilon>0,\ d(a,x)<\varepsilon\Rightarrow x\in U$
を満たすことをいう. $a\in X$,$\varepsilon > 0$ に対して
$U_a(\varepsilon)\stackrel{\mathrm{def}}{=}\{\,x\in X\ |\ d(a,x) < \varepsilon\,\}$
と定めると,上の定義は
$\forall a\in U,\ \exists\varepsilon>0,\ U_a(\varepsilon)\subset U$
と表すことができる.$U_a(\varepsilon)$ を $a$ の $\varepsilon-$近傍と呼ぶ.
$X$ のすべての開集合からなる集合を $\mathcal{O}_X$,$\mathcal{O}_{(X,d)}$ などと書くことにする. 以下の三つの性質は開集合という概念を特徴付ける重要なものである:  $X$ の部分集合 $F$ が閉集合であるとは,その補集合 $F^c$ が開集合であることをいう. $X$ のすべての開集合からなる集合を $\mathcal{F}_X$,$\mathcal{F}_{(X,d)}$ などと書く.
内部と閉包 $(X,d)$ を距離空間とする.