第11講 compact性
compact性
位相空間 $(X,\mathcal{O})$ において,集合 $K\ (\subset X)$ が
compactであるとは,
開集合の族 $\{\,O_\lambda\in\mathcal{O}\ |\ \lambda\in\Lambda\,\}$ であって
$\displaystyle K\subset\bigcup_{\lambda\in\Lambda}O_\lambda$
を満たすものが
任意に与えられたとき,ここから有限個の開集合
$O_{\lambda_1},O_{\lambda_2},\ldots,O_{\lambda_N}\in \{\,O_\lambda\in\mathcal{O}\ |\ \lambda\in\Lambda\,\}$ を選んで
$\displaystyle K\subset\bigcup_{k=1}^NO_{\lambda_k}$
とできることをいう.
このような状況を「
$K$ の任意の開被覆から有限開被覆を選べる」と言い表す.全体集合がcompactであるような位相空間を
compact空間という.
空集合 $\emptyset$ は自明な場合でありあまり用事はないが,空集合は任意の集合の部分集合と規約されることから,一応定義通りに考えると空集合もcompactということになる.
$\mathbf{R}$ に通常の位相を入れるとき
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$\{\,0,1,2,\ldots,99\,\}$ はcompactである.
実際,任意の開被覆
$\displaystyle \{\,0,1,2,\ldots,99\,\}\subset\bigcup_{\lambda\in\Lambda}O_\lambda$
をとると,$k\in O_{\lambda_k}\ (k=0,1,\ldots,99)$となる$\lambda_0,\lambda_1,\ldots,\lambda_{99}\in\Lambda$が存在するので
$\displaystyle \{\,0,1,2,\ldots,99\,\}\subset\bigcup_{k=1}^{99}O_{\lambda_k}$
となる.
この場合に限らず,いかなる位相空間であっても有限集合はcompactであることは同様にしてわかる.
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$\mathbf{Z}$ はcompactではない.
実際,例えば開被覆
$\displaystyle \mathbf{Z}\subset \bigcup_{n\in\mathbf{Z}}(n-1,n+1)$
を考えると,ここから有限個の開集合 $(n_k-1,n_k+1),\ k=1,2,\ldots,N$ を選んで
$\displaystyle \mathbf{Z}\subset \bigcup_{k=1}^N(n_k-1,n_k+1)$
とすることは決してできない.
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$(0,1]$ はcompactではない.
実際,例えば開被覆
$\displaystyle (0,1]\subset \bigcup_{n\in\mathbf{N}}\big(1/n,\infty\big)$
を考えると,ここから有限個の開集合 $(1/n_k,\infty),\ k=1,2,\ldots,N$
を選んで
$\displaystyle (0,1]\subset \bigcup_{k=1}^N(1/n_k,\infty)$
とすることは決してできない.
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$[0,1]\cup[2,3]$ のような有界閉集合が $\mathbf{R}$ (通常の位相)におけるcompact集合である.このことは改めて示す.
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$[0,\infty)$ はcompactではない.
実際,例えば開被覆
$\displaystyle [0,\infty)\subset \bigcup_{n\in\mathbf{N}}(-\infty,n)$
を考えると,ここから有限個の開集合 $(-\infty,n_k),\ k=1,2,\ldots,N$ を選んで
$\displaystyle [0,\infty)\subset \bigcup_{k=1}^N(-\infty,n_k)$
とすることは決してできない.
一般に,compact性の判定はあらゆる開被覆を可能性として考えなければならず,多くの場合容易ではないが,
$\mathbf{R}^n$ (通常の位相)においてはcompactであることと有界閉集合であることは同値である証明pdfので,その場合に限ってはcompactであるか否かが重大な問題になることは少ない.