線型代数

第7講 行列式の性質

3次の行列式と体積 $2$ 次の行列式が $xy$ 平面における平行四辺形の面積を表したように, $3$ 次の行列式は $xyz$ 空間における平行六面体の体積を表す. すなわち
のように,ベクトル $\mathbf{a}$,$\mathbf{b}$,$\mathbf{c}$ によってつくられる平行六面体の体積を $V$ とすると
$V=\big|\,\det(\ \mathbf{a}\ \mathbf{b}\ \mathbf{c}\ )\,\big|$
が成り立つ. 特に,$xyz$ 空間の四点 $\mathrm{A}$,$\mathrm{B}$,$\mathrm{C}$,$\mathrm{D}$ を頂点とする四面体の体積は $\det\big(\ \overrightarrow{\mathrm{AB}}\ \ \overrightarrow{\mathrm{AC}}\ \ \overrightarrow{\mathrm{AD}}\ \big)$ の絶対値の $1/6$ に等しいなぜ1/6?
行列式の性質 二次の行列式について既に見た各性質は,一般の正方行列について成り立つ:  $2$ 次の場合と同様であるが,次の性質が一般の行列式の計算において基本的となる: 上記の性質からこれらを導くことは容易である詳しく!
積の行列式 一般の正方行列 $A$,$B$ についても,やはり
$\det{(AB)}=\det{A}\det{B}$
が成り立つ. $2$ 次の場合で見た通り,このことから導かれる重要な事実はいくつもあるが, ここでは特に,$3$ 次の場合に成り立つ次のことに注意しておこう:
Cramerの公式 Cramerの公式も一般の次数で成り立つ. すなわち,$n$ 次正方行列 $A=(\ \mathbf{a}_1\ \ \mathbf{a}_2\ \cdots\ \mathbf{a}_n\ )$ を係数行列とする連立一次方程式
$A\mathbf{x}=\mathbf{b}$
の解は,$\det{A}\neq0$ ならば
$ x_i=\dfrac{1}{\det{A}}\Big|\ \mathbf{a}_1\ \cdots\ \mathbf{a}_{i-1}\ \mathbf{b}\ \mathbf{a}_{i+1}\ \cdots\ \mathbf{a}_n\ \Big|\\[1mm] \hspace{110pt}(i=1,2,\ldots,n) $
により与えられる.$2$ 次の場合と同じく,線型性等の行列式の性質により容易に示される.