線型代数

第11講 行列の階数

線型写像の像空間と階数 実 $m\times n$ 行列 $A$ は,$\mathbf{R}^n$ のベクトル $\mathbf{x}$ を $\mathbf{R}^m$ のベクトル $A\mathbf{x}$ に変換する線型写像(一次写像)を定める.この写像を $f_A$ と表す:
$f_A(\mathbf{x})=A\mathbf{x}\quad(\mathbf{x}\in\mathbf{R}^n)$
行列 $A$ が定める線型写像 $f_A$ の像空間とは,$f_A$ によって移されたすべてのベクトルの集合であり,$\mathrm{Im}f_A$ と表す.$A$ が実 $m\times n$ 行列ならば,$\mathrm{Im}f_A$ は $\mathrm{R}^m$ の部分空間である:
$\mathrm{Im}f_A \stackrel{\mathrm{def}}{=}\{\,f_A(\mathbf{x})\ |\ \mathbf{x}\in\mathbf{R}^n\,\} =\{\,A\mathbf{x}\ |\ \mathbf{x}\in\mathbf{R}^n\,\}$
$A=(\,\mathbf{a}_1\ \mathbf{a}_2\ \cdots\ \mathbf{a}_n\,)$ とすると
$\mathrm{Im}f_A =\langle\,\mathbf{a}_1, \mathbf{a}_2, \cdots, \mathbf{a}_n\rangle$
である詳しく! この像空間 $f_A$ の次元のことを行列 $A$ の階数といい,$\mathrm{rank}A$ で表す (「線型写像 $f_A$ の階数」ともいい,$\mathrm{rank}f_A$ と表すこともある).
行列の基本変形と階段行列 行列に対する次の操作は列基本変形と呼ばれる: ここまでに見てきたように,行列 $A$ にこれらの操作を行っても像空間 $\mathrm{Im}f_A$ は不変である詳しく! から,行列の階数 $\mathrm{rank}A=\mathrm{dimIm}f_A$ も不変である. 特に,
ある列の何倍かを他の列に加えても階数は変わらない
ことに注意しよう.
 一般に,行列の階数はそのままの形では判断が難しいので,列基本変形により列ベクトルの一次独立性がはっきりとわかる形に変形するとよい.その形とは,例えば
$\left(\begin{array}{ccc}3&0&0\\2&2&0\\1&7&1\end{array}\right)$  $\left(\begin{array}{ccc}1&0&0\\1&1&0\\0&1&0\end{array}\right)$  $\left(\begin{array}{cccc}2&0&0&0\\5&4&0&0\\0&2&0&0\\3&9&1&0\end{array}\right)$
のように上端から続く $0$ の数が列番号とともに増加する階段行列と呼ばれる形である.このような行列であれば,その階数は順に $3$,$2$,$3$ と容易にわかる 詳しく!