線型代数

第24講 unitary行列とHermite行列

行列の共役転置 行列 $A$ の共役転置${}^t\overline{A}$とは,その転置行列の各成分の複素共役をとったものをいう 例えば? 共役転置は,複素数ベクトル空間のドット積との関係において現れる.すなわち,$m\times n$ 行列 $A$ について,次が成り立つ.
$ A\mathbf{x}\cdot\mathbf{y}=\mathbf{x}\cdot{}^t\overline{A}\mathbf{y} \qquad(\forall\mathbf{x}\in\mathbf{C}^n,\ \forall\mathbf{y}\in\mathbf{C}^m) $
証明pdf
随伴行列 $\mathbf{C}^n$,$\mathbf{C}^m$ にそれぞれ内積 $(\cdot,\cdot)_n$,$(\cdot,\cdot)_m$ が与えられているとき,$m\times n$ 行列 $A$ は内積空間 $(\mathbf{C}^n,(\cdot,\cdot)_n)$ から内積空間 $(\mathbf{C}^m,(\cdot,\cdot)_m)$ への線型写像を定めるが,このとき $A$ の随伴行列とは
$(A\mathbf{x},\mathbf{y})_m=(\mathbf{x},A^*\mathbf{y})_n\qquad(\forall\mathbf{x}\in\mathbf{C}^n,\ \forall\mathbf{y}\in \mathbf{C}^m)$
を満たす $n\times m$ 行列 $A^*$ のことをいう.
内積をともに通常のドット積とすると,前項で見たように随伴行列は共役転置に一致する:
$A^*={}^t\overline{A}$
しかし一般の内積では必ずしもそうはならない.実際,$\mathbf{C}^n$ における内積 $(\cdot,\cdot)_n$ は適当な正則行列 $H_n$ を用いて
$(\mathbf{x},\mathbf{y})_n=\mathbf{x}\cdot H_n\mathbf{y}$
と,ドット積で表すことができる 詳しく! から,$m\times n$ 行列 $A$ の随伴行列は
$(A\mathbf{x},\mathbf{y})_m=A\mathbf{x}\cdot H_m\mathbf{y}\\ \hspace{39pt}=\mathbf{x}\cdot {}^t\overline{A}H_m\mathbf{y}\\ \hspace{39pt}=\mathbf{x}\cdot H_n{H_n}^{-1}\,{}^t\overline{A}H_m\mathbf{y}\\ \hspace{39pt}=(\mathbf{x}, {H_n}^{-1}\,{}^t\overline{A}H_m\mathbf{y})_n$
より
$A^*={H_n}^{-1}\,{}^t\overline{A}H_m$
で与えられることになる.
unitary行列 $\mathbf{C}^n$ の内積を $(\cdot,\cdot)_n$ とするとき
$(U\mathbf{x},U\mathbf{y})_n=(\mathbf{x},\mathbf{y})_n\qquad(\forall \mathbf{x},\mathbf{y}\in \mathbf{C}^n)$
を満たす $n$ 次正方行列 $U$ をunitary行列という.この条件は
$U^*U=UU^*=E$
と同値である詳しく!
$U$ をunitary行列とするとき,次が成り立つ:
Hermite行列 $\mathbf{C}^n$ の内積を $(\cdot,\cdot)_n$ とするとき
$(H\mathbf{x},\mathbf{y})_n=(\mathbf{x},H\mathbf{y})_n\qquad(\forall \mathbf{x},\mathbf{y}\in \mathbf{C}^n)$
を満たす $n$ 次正方行列をHermite行列という.この条件は
$H^*=H$
と同値である.
$H$ をHermite行列とするとき,次が成り立つ: