線型代数

第20講 固有値と固有空間,行列の対角化

固有値と固有空間 $A$ を正方行列とするとき
$A\mathbf{v}=\lambda\mathbf{v}$
を満たすようなスカラー $\lambda$ とベクトル $\mathbf{v}(\neq\mathbf{0})$ を,それぞれ $A$ の固有値,$\lambda$ に属する固有ベクトルという. 固有値は固有方程式
$\det(A-\lambda E)=0$
の解であり ,固有値 $\lambda$ に属する固有ベクトルは同次連立一次方程式
$(A-\lambda E)\mathbf{v}=\mathbf{0}$
の非自明解である 詳しく!証明pdf
 $\lambda$ を $A$ の固有値とするとき,行列 $A-\lambda E$ が定める線型写像の核空間(第16講) のことを固有値 $\lambda$ に属する固有空間といい,$W(\lambda)$ と表わす:
$W(\lambda)=\{\,\mathbf{v}\,|\,(A-\lambda E)\mathbf{v}=\mathbf{0}\,\}=\{\,\mathbf{v}\,|\,A\mathbf{v}=\lambda\mathbf{v}\,\}$
要するに固有空間とは固有ベクトルの集合だと言っても悪くはないが,固有空間は零ベクトルも含むことに注意(零ベクトルは固有ベクトルではない).
行列の対角化 正方行列 $A$ が対角化可能であるとは,適当な対角行列何? $D$ と正則行列 $P$ により
$A=PDP^{-1}$ (あるいは $P^{-1}AP=D$)
と表わせることをいう. 対角化を行う手順は,$A$ の固有値 $\lambda_1,\lambda_2,\ldots,\lambda_n$ とそれぞれに属する固有ベクトル $\mathbf{v}_1,\mathbf{v}_2,\ldots,\mathbf{v}_n$ を求め,それらを並べて
$A(\mathbf{v}_1\ \mathbf{v}_2\ \cdots\ \mathbf{v}_n)=(\mathbf{v}_1\ \mathbf{v}_2\ \cdots\ \mathbf{v}_n)\left(\begin{array}{cccc}\lambda_1&&&\\ &\lambda_2&&\\ &&\ddots\\ &&&\lambda_n\end{array}\right)$
という形を作ればよい.例えば $n=2$ の場合なら,固有値と固有ベクトルの関係から
$A\mathbf{v}_1=\lambda_1\mathbf{v}_1$, $A\mathbf{v}_2=\lambda_2\mathbf{v}_2$
が成り立つが,これらをまとめると
$A(\mathbf{v}_1\ \mathbf{v}_2)=(\lambda_1\mathbf{v}_1\ \lambda_2\mathbf{v}_2)\\ \hspace{37pt}=(\mathbf{v}_1\ \mathbf{v}_2)\left(\begin{array}{cc}\lambda_1&0\\0&\lambda_2\end{array}\right)$
という形が得られる.この両辺に $(\mathbf{v}_1\ \mathbf{v}_2)$ の逆行列を(あれば)掛けて
$A=(\mathbf{v}_1\ \mathbf{v}_2)\left(\begin{array}{cc}\lambda_1&0\\0&\lambda_2\end{array}\right)(\mathbf{v}_1\ \mathbf{v}_2)^{-1}$
とすればよいが,逆行列は存在しないかも知れず,その場合は対角化は不可能ということになる.$A$ が対角化可能であるためには
$A$ の固有ベクトルを並べて正則行列がつくれる
ことが必要十分条件である 詳しく!