線型代数

第16講 線型写像の像と核

線型写像 線型写像についてはこれまでにも触れてきた(第3講,第11講)が,その定義を改めて確認しておく.$V$,$V'$ をともに $K(=\mathbf{R}\ \mathrm{or}\ \mathbf{C})$ をスカラーとするベクトル空間とするとき,写像 $f:V\to V'$ が線型写像であるとは
$\mathrm{(i)}\ f(\mathbf{v}_1+\mathbf{v}_2)=f(\mathbf{v}_1)+f(\mathbf{v}_2)\qquad(\mathbf{v}_1,\mathbf{v}_2\in V)\\[2mm] \mathrm{(ii)}\ f(k\mathbf{v})=kf(\mathbf{v})\qquad(\mathbf{v}\in V,\ k \in K)$
が成り立つことをいう.
次のことが特に重要である:
  • 線型写像は基底の行き先により一意に定まる詳しく!
  • $\mathbf{R}^n$ から $\mathbf{R}^m$ への線型写像は $m\times n$ ($m$ 行 $n$ 列)行列により表される詳しく!
線型写像の像と核 $f:V\to V'$ を線型写像とする. 第11講で線型写像の像について述べたが,今回は核と合わせて定義を確認しておく.$f$ の(image)は
$\mathrm{Im}f\stackrel{\mathrm{def}}{=}\{\,f(\mathbf{x})\,|\,\mathbf{x}\in V\,\}$
により,$f$ の(kernel)は
$\mathrm{Ker}f\stackrel{\mathrm{def}}{=}\{\,\mathbf{x}\in V\,|\,f(\mathbf{x})=\mathbf{0}\,\}$
によりそれぞれ定義される. すなわち,$\mathrm{Im}f$ とは,$V$ から $f$ によって移されてくる $V'$ のベクトルからなる集合,$\mathrm{Ker}f$ とは, $f$ によって零ベクトルに移される $V$ のベクトルからなる集合である.
 像 $\mathrm{Im}f$ の次元を $f$ の階数といい,$\mathrm{rank}f$ とあらわす:
$\mathrm{rank}f\stackrel{\mathrm{def}}{=}\dim\mathrm{Im}f$
次元については
$\mathrm{rank}f+\dim\mathrm{Ker}f=\dim{V}$
という関係が成り立つ詳しく!
 前節で見たように,$\mathbf{R}^n$ から $\mathbf{R}^m$ への線型写像は $m\times n$ 行列 $A$ により
$f_A(\mathbf{x})=A\mathbf{x}\quad(\mathbf{x}\in A)$
と表わせるから,その場合はそれぞれ
$\mathrm{Im}f_A=\{\,A\mathbf{x}\,|\,\mathbf{x}\in\mathbf{R}^n\,\}$
$\mathrm{Ker}f_A=\{\,\mathbf{x}\in\mathbf{R}^n\,|\,A\mathbf{x}=\mathbf{0}\,\}$
となる.$f_A$ の階数は行列 $A$ の階数とも呼ばれ,$\mathrm{rank}A$ とも書くのであった.さらに,$A=(\mathbf{a}_1\ \mathbf{a}_2\ \cdots\ \mathbf{a}_n)$ ならば
$\mathrm{Im}f_A=\langle \mathbf{a}_1,\mathbf{a}_2,\ldots,\mathbf{a}_n\rangle$
である(第11講)から,これらの部分空間の基底を求める方法は前講までに見てきた通りである.