線型代数

第15講 部分空間の正規直交基底

部分空間の正規直交基底 $\mathbf{R}^n$ の部分空間については第9講,第10講で既に述べたが,改めてその定義および基底の求め方を確認しておく.
 $K$($=\mathbf{R}\ \mathrm{or}\ \mathbf{C}$)をスカラーとするベクトル空間 $V$ において,$V$ の部分集合 $W$ が和とスカラー倍に関して閉じているとき,すなわち
$\mathrm{(i)}\ \mathbf{v},\mathbf{w}\in W\ \Rightarrow\ \mathbf{v}+\mathbf{w}\in W\\[2mm] \mathrm{(ii)}\ \mathbf{v}\in W,\ k\in K\ \Rightarrow\ k\mathbf{v}\in W$
を満たしているとき,$W$ を $V$ の部分(ベクトル)空間という.
 $\mathbf{R}^n$ の部分空間は適当な行列 $A$ を用いて
$\{\,\mathbf{x}\,|\,A\mathbf{x}=\mathbf{0}\,\}$
と表わされる(第9講). この部分空間の正規直交基底を求めるには連立一次方程式 $A\mathbf{x}=\mathbf{0}$ を解くことによって得られた基底を,前講のGram-Schmidtの方法で正規直交化すればよい.
 $W=\{\,\mathbf{x}\,|\,A\mathbf{x}=\mathbf{0}\,\}$ を $\mathbf{R}^n$ の部分空間とするとき,その次元について
$\mathrm{dim}W=n-\mathrm{rank}{A}$
が成り立つ 詳しく!
 $K$ をスカラーとするベクトル空間 $V$ において,ベクトル $\mathbf{a}_1,\mathbf{a}_2,\ldots,\mathbf{a}_n$ が生成する(張る)部分空間
$\langle\mathbf{a}_1,\mathbf{a}_2,\ldots,\mathbf{a}_n\rangle$ $\stackrel{\mathrm{def}}{=}\{\,t_1\mathbf{a}_1+t_2\mathbf{a}_2+\ldots+t_n\mathbf{a}_n\ |\ t_1,t_2\ldots,t_n\in K\,\}$
により定義される. 第10講 で見たように,この形で与えられた部分空間の基底を求めるには
$\{\,\mathbf{a}_1,\mathbf{a}_2,\ldots,\mathbf{a}_n\,\}$ のうちあるベクトルのスカラー倍を他のベクトルに加えても,生成される部分空間は不変である.すなわち,例えば $\mathbf{a}_j$ の $k$ 倍を $\mathbf{a}_i$ に加えて得られる部分空間
$\langle\mathbf{a}_1,\ldots,\mathbf{a}_i+k\mathbf{a}_j,\ldots,\mathbf{a}_j,\ldots,\mathbf{a}_n\rangle$
は元の $\langle\mathbf{a}_1,\mathbf{a}_2,\ldots,\mathbf{a}_n\rangle$ と等しい
という事実を利用して,一次独立なベクトルの組をつくればよいのであった. そうして得られた基底からGram-Schmidtの方法で正規直交基底を得ることができる.